MBO実施による非上場化から13年経ての再上場について

MBO実施による非上場化から13年経ての再上場について

株式会社ワールド

代表取締役会長
寺井 秀藏
代表取締役 社長執行役員
上山 健二

当社は、本日、株式会社東京証券取引所より本則市場への上場承認をいただきました。上場日は2018年9月28日(金)を予定しております。
当社は、2005年11月にマネジメント・バイアウト(MBO)による株式の公開買付けを行い、上場を廃止いたしました。このたびの再上場にあたり、そのMBOの経緯、ならびに再上場の目的について、当社及び経営陣の考えをお知らせいたします。

2005年にMBOを実施した背景・理由


当社は、1993年11月大阪証券取引所市場第二部に上場、1998年12月東京証券取引所市場第二部に上場、1999年9月東京証券取引所及び大阪証券取引所の市場第一部銘柄に指定され、その後、2005年11月に長期的、持続的な企業価値の最大化を図るため、MBOによる株式の公開買付けを行い、上場を廃止いたしました。
ファッションビジネスでは、消費者のライフスタイルの変化やニーズの多様化に加え、気象状況や季節要因等の影響を受けやすいものであり、顧客の消費行動、マーケットやチャネルの変化を把握し、さらにコンペティターの動向も認識しつつ、絶えず変化対応しながら、価値を提供し続ける企業グループであることが求められます。
このような事業の特性や環境の下で、当社グループが長期的・持続的な企業価値の最大化を成し遂げていくためには、常に消費者の嗜好、マーケットやチャネルの変化を見極めながら、柔軟にポートフォリオを組み替えていく必要があります。このポートフォリオ戦略の推進には、それぞれの業務において再現性のある仕組みを作り、収益構造の異なる複数の業態、ブランドの業務を安定化させる基盤としてのプラットフォームの構築が欠かせません。(当社では1990年代より、このプラットフォームをスパークス(SPARCS)モデル(注)と呼び、進化させてきております。)
しかし、それぞれの業態においては、出店するチャネルが違うことで収益構造が異なり、それぞれのチームが運営することによる業務精度にばらつきが発生するリスクもあり、生産や販売といったプラットフォームの構築にも資金・人材の先行投資が必要なことから、当時は、スパークスモデルの構築に向けた投資は短期的に収益へマイナス影響を及ぼす可能性もありました。このことは短期的な業績向上を求める傾向が強い投資家からは必ずしも理解が得られ難く、結果として変化に対応した迅速な事業戦略を実行できずに、中長期的な収益基盤の構築が推進できない可能性がありました。
このように、短期的な業績の変動に右往左往させられることなく、最適なポートフォリオの構築に取り組み、グループ内でのプラットフォームを強化することなどで、中長期業績の成長可能性を高めたいとう、当時の当社経営陣の思いを実現する手段としてMBOを実施いたしました。

(注)スパークス(SPARCS)
Super(卓越した)、Production(生産)、Apparel(アパレル)、Retail(小売)、Customer Satisfaction(顧客満足)の略称であり、お客様を基点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変えることで顧客満足と生産性を最大化する仕組みを意味します。

MBO公表後に進めた戦略・施策


MBOの公表後、当社は、(1)ショッピングセンターチャネルへの出店加速、(2)複数の業態及びブランド運営を支えるプラットフォームの構築、(3)非公開企業としてのコーポレート・ガバナンス体制の追求、といった施策を矢継ぎ早に実施いたしました。
特に、産業ロスを極小化するプラットフォーム開発への挑戦においては、多業態・多ブランド戦略を支える生産プラットフォーム、デジタルプラットフォーム、販売プラットフォーム及び空間プラットフォームを構築しつつ、リアルな事業経験に裏打ちされたITシステムで事業基盤を絶え間なくアップデートし続けることで、スパークス(SPARCS)構想をより発展的に進化させることができました。
そして、こうしたプラットフォームの構築時には、一時的な先行投資の負担があったものの、現在では当社グループの安定的な収益計上を支えるとともに、プラットフォーム機能の一部を外部企業へオープン化することによる外販事業も本格始動しております。

構造改革プランの実行及びコーポレートデザインの構築


リーマンショックに端を発した世界的な経済環境の悪化等をきっかけとして、ファッション業界では企業数やブランド数、店舗数、商品数の過剰が一気に露呈し、当社グループの業績も一時的に厳しい状況となりました。このような状況下において、当社は2016年3月期以降に、オーバーサプライへの適合を可能にする抜本的なコスト構造改革に着手しました。スピード感をもって一連の施策を完遂した結果、2018年3月期にかけてコア営業利益(注)のV字型回復を達成するとともに、その過程においてプラットフォームの完成度も増すことができたものと認識しております。
一方、当社は、国内アパレル市場は成熟していると考えており、業態開発と出店拡大の掛け算による従来型の成長パターンを維持することは困難と認識しております。ファッション産業はもともと多様な中堅・中小企業が乱立するフラグメントマーケットであることから、過当競争や事業承継が業界再編を誘発しやすい土壌であるうえ、デジタル化がファッションビジネスの在り方を根本的に変える可能性も生じてきました。そこで、当社は2017年4月に新たに投資事業やデジタル事業を事業ドメインに加えるとともに、事業持株会社体制へ移行しました。

(注)コア営業利益
売上収益から国際会計基準(IFRS)における売上原価と販売費及び一般管理費を控除した数値であり、日本基準における営業利益に相当する指標であります。当該財務指標は、国際会計基準により規定された指標ではないものの、当社グループの経営陣が本業の稼ぐ力として最重視する指標であり、投資家にとっても当社ループの業績を評価するために有用であると考えております。

更なる成長のための基盤確立に向けて


当社グループにおいては、このコーポレートデザインの変革と並行して、次のような戦略指針を立て、更なる成長のための基盤確立に取り組んでおります。
①当社グループの事業ポートフォリオの入れ替えにとどまらず、ファッション産業を対象とした他社ブランドへの投資及び価値向上に取り組み、業界再編や合従連衡の一翼を担うことで、ファッション産業の発展に貢献することも目指しております。
②当社グループの更なる収益成長に向け、従来のブランド開発とは別の収益源として、デジタル軸でのB2Bソリューションを育てる方針です。デジタル事業を収益牽引役に育てるには、戦略投資の先行的かつ重点的な実行が有効と判断しております。
「企業体質強化のための構造改革プラン完遂」と「持続的成長に向けたコーポレートデザイン構築」を果たした今こそ、持続的成長に向けた一連の戦略を実行に移す好機と捉えております。そのためにも、財務体質を一段と健全化することに加え、戦略投資にも耐え得る資金調達手段を確保することや事業の永続性を担保する意思決定及び業務運営に係る規律と透明性を強化することが不可欠と考えております。

再上場の目的について


ファッション産業を取り巻く業界環境も大きく変化しており、またMBOの目的であったアパレルバリューチェーン上のプラットフォーム構築にも目処を付けることができました。構造改革プランの完遂で「利益の出易い体質」になったこともあり、一定の環境変化にも対応可能な収益管理体制は強化されたと認識しており、投資家の皆様の期待に応え続けられると考えております。
加えて、上記「更なる成長のための基盤確立に向けて」に記載の戦略実現のため、ここまで整備してきたプラットフォーム事業の収益化、ファンド等も活用したM&A及びポートフォリオマネジメントの適切な運用、デジタル事業などへの先行的な戦略投資を集中的に行う必要があると認識しております。
また、2015年4月以降の構造改革プラン着手を皮切りに、外部人材主導の執行チームや多様な経歴・能力を有する社外役員を編成するなど、経営体制も一新して再構築を進めてきました。そして、このタイミングにおいて、外部株主の厳しく規律あるコーポレート・ガバナンスの視点を経営に活かしていくことが、今後の当社グループの更なる成長にとって有益であると考えております。
以上のとおり、今後の持続的成長及び収益拡大のためには、外部株主の高い要求に応えることが継続的に求められる資本市場に身を置く上場企業になることこそが、それを実現できる方法であると考えており、本日、株式会社東京証券取引所のご承認をいただき、再上場させていただく所存です。

ご注意:
この文書は、一般に公表するための記者発表文であり、日本国内外を問わず、一切の投資勧誘又はそれに類する行為を目的として作成されたものではありません。2018年8月22日の当社取締役会において決議された当社普通株式の募集及び売出しへの投資を行う際は、ず当社が作成する自己株式の処分並びに株式売出届出目論見書及びその訂正事項分をご覧いただいた上で、投資家ご自身の判断でなさるようお願いいたします。「自己株式の処分並びに株式売出届出目論見書」(及び訂正事項分)は引受証券会社より入手することができます。
また、この文書は、米国内における証券の売付け又は買付けの勧誘を構成するものではありません。文中で言及されている証券は、1933年米国証券法(以下「米国証券法」という。)に基づき登録されておらず、また、登録される予定もありません。米国証券法上、同法に基づく登録を行うか又は登録からの適用除外の要件を満たさない限り、米国において当該証券に係る売付け又は勧誘を行うことはできません。米国において当該証券の公募を行う場合には、当社及びその経営陣に関する詳細な情報並びに当社の財務諸表を記載し、当社又は売出人から入手できる英文目論見書によって行うこととなりますが、本件においては米国内で公募が行われる予定はありません。