ワールドグループは、今期より企業のDE&Iを支援する法人向けサービス「Cradle(クレードル)」を導入し、健康やDE&Iについて考える研修会を定期的に開催しています。
今回は、株式会社Cradle 代表取締役社長のスプツニ子!氏をお迎えして、ワールド北青山ビルで講演会を開催。さらに、ワールド社員とのパネルディスカッションを行いました。
*DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)・・・多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂性(Inclusion)を意味する言葉
<株式会社Cradle 代表取締役社長 尾嵜優美(スプツニ子!)>
MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ助教、東京大学大学院特任准教授を経て、現在、東京藝術大学美術学部デザイン科准教授。
2017年に世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」、2019年にTEDフェロー選出。第11回「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本特別賞」、「Vogue Woman of the Year」、日本版ニューズウィーク「世界が尊敬する日本人100」 選出等受賞。2019年、株式会社Cradleを設立、代表取締役社長就任。
第1部:『DE&Iの重要性 -EQUITY(公平性)を理解する-』 スプツニ子!さんによるトークセッション
●STEP1:EQUITY(公平性)を理解する
●STEP2:EQUITYを実現するために、企業構造のデザイン(働き方/評価)を見直す
●STEP3:健康のバイアスを見直す
最近よく耳にする「多様性」や「公平性」、「男女の差をなくす」といったワード。企業によっては「性別は関係ない。個性を大切にして、実力主義でやっている」という方針を持つところもあれば、一方で「多様性を意識した女性活躍支援ばかりで、逆に男性を差別しているのでは?」という意見も見受けられます。講演会の第1部では、スプツニ子!さんが現代の多様性社会をテーマに、これまでの働き方と現代の働き方を比較しながら、真のEQUITY(公平性)とはなにか?を問いかけるトークセッションが行われました。
トークセッションでは、無意識のうちに特定の性別や人を不利な状況に追い込んでしまう「Structual Inequality:構造的な差別」について触れながら、スプツニ子!さん自身のエピソードを交えて、現代の職場の在り方と多様な働き方についてお話ししてくださいました。
第2部:ワールド社員とのパネルディスカッション
ワールドで働く3名の社員と、3つのテーマについてパネルディスカッションを行いました。
<今回パネルディスカッションに参加してくれたワールド社員>
1つ目のテーマ:『悪気なく無意識にEQUITY(公平性)を妨げているものは?』
<中島さん>
自分がいる「GALLEST」は女性メンバーが多くて、お子さんがいる方も沢山います。なので、働き方には割と柔軟に対応できているほうだと思います。ただ、お店の状況に合わせて休日や夜遅くに作業することもあって。例えば、ポップアップの準備などは館が閉館してから行うので、どうしても夜遅くに作業することが多くなります。そうなると、お子さんがいる方に代わって他のメンバーが出るので、今度は他のメンバーがハードワークを強いられていないか、心配です。どのチームも支え合いが必要なので、何か解決策はないか?と考えています。
<岩舘さん>
自分の部署は商品に直接関わる仕事なので、どうしても出社が必要になってきます。テレワークがなかなかできないので、小さいお子さんがいる人は時間の調整がしづらい時もあるだろうな、と思いますね。
<佐々木さん>
私は3人の子供がいるのですけど、今はフルタイムで働いています。それも、夫の仕事が比較的時間の調整がしやすいこともあって、育児や家事をうまく分担できているおかげなんです。でも、私のような環境でないと、小さな子供がいながらフルタイムで働いたり、そもそも自分のキャリアすら描きにくいのかな、と思います。働く母親にとって「仕事にどれくらい時間をかけられるか」は大きな課題です。スプツニ子!さんのお話を聞いて、世の中の会社に求められているのは、 気遣いなどの“配慮”よりも、働く母親が仕事を諦めずにキャリアを歩むことができる“仕組み”なんだと思いました。
<スプツニ子!さん>
私も、佐々木さんと同じです。家事と育児をしながら今の仕事を続けられるのは、夫のおかげだと思います。ただ、もちろん全員がこの環境にいるわけではないです。だからこそ、働き方については今一度見直す必要があると思います。中島さんも言っていたように、業界や働く環境によっては、業務時間を調整する、なんてことはやっぱり難しいですよね。それでも、整えるべき制度や仕組みはあるはずです。まずは、そうした仕組みを整えることからはじめる。とても重要なことです。
2つ目のテーマ:『心理的安全性の高い職場づくり』
※心理的安全性とは…自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態のこと
今の職場では、みなさんどのように感じているのでしょうか?
<中島さん>
リーダーシップをとるために、自分が推進して何かを進める場面は多いです。でも、会議や打ち合わせによっては、「ここは自分が入らないほうが、みんなから意見が出やすいかも」と思うこともあります。そんな時は、あえて自分はその輪に入らず、一歩引いてみたりしています。あと、物理的に距離を取ったりして、そんな工夫もしますね。会議で自分が座る位置をちょっと変えてみたり、真ん中ばかり座らない、とか(笑)
<岩舘さん>
総じて意見は言いやすい環境だと思います。自分はまだ若手だけど、割と臆せず意見を言えるタイプなんです。ただ、例えばもし同年代が同じ会議にいるってなったら、内容によっては、意見が言えない若手もいると思います。
<佐々木さん>
真の意味での「心理的安全性」ってすごく難しいテーマだと思いました。「構造的な差別」のように、すごくいい人だし優しいけど、仕事になるとその人になんか言いづらい、みたいなことってありますよね。これが何なのか、ちょっと表現しづらいですけど、心理的安全性の高い職場づくりをするために、超えなくてはならない課題だと思っています。
<スプツニ子!さん>
私も、教授会に入った時は意見することに葛藤がありました。教授会の人はみんな男性で年齢層も同じ、似たような背景の人ばかりだったので。そんな女性が少ないなかで何か発言すると、私の意見が「女性代表の発言」として受け取られてしまうかもしれない、と不安でした。実際に、女性の人数が少ない会議では、女性の発言が減少する傾向が見られるというデーターもあります。これこそ、「構造的な差別」ですよね。でも、そんなときは「もしかしたら、自分は構造的な差別にあっているのかも?」と意識するだけで、少し気が楽になると思います。「構造的な差別」の中で自分の意見を伝えることは、決して“わがままではない”ことを、みなさんにお伝えしたいです。
<佐々木さん>
「意見することへの葛藤」は分かります。自分は割と根性で困難を乗り越えていくタイプなので、仕事でもその精神論を後輩や下の世代に押し付けていないか、心配になりますね。
<スプツニ子!さん>
それ、あるあるだと思います!今活躍されている上の世代の働く女性って、今よりももっと構造が偏っているなかで、必死に戦ってきた世代だからです。でも、やっぱり構造っていうのは、その時代その時代に合った形がある。だからこそ、私は次の世代のために構造や仕組みを改善して、変えられるよう働きかけていきたいです。
3つ目ののテーマ:『多様な人材の活用について』
<中島さん>
年代のバランスはとれています。特徴的なのは、半分が中途採用だということ。全然違う経験をしてきた人たちとの仕事は、新たな気づきと学びがありますね。あとは、女性の視点も大切です。「GALLEST」は女性のブランドなので、男性だけで商品の企画をするって、やっぱりおかしいですよね。女性の視点も含め、色んなバックグラウンドを持つ人の意見を反映しながら商品を作っていくことで、新しいアイデアが形になっていきます。
<中島さん>
3年間店舗研修をしていた時に、いわゆる「価値観の違い」を感じた経験があります。自分は学生時代はサッカー部に所属していて、同じ考えや価値観を持った人とずっと一緒にいました。そういう環境にいたからこそ、社会人になってより強く、「価値観の違い」を実感したんです。接客ひとつにしても、同期それぞれが全然違う考え方を持っていて。そこから新しい学びも得たし、自身の視野も広がりました。
<佐々木さん>
私は今新卒採用を担当していますが、やっぱり多様性人材の採用を重視しています。
というのも、上司から「生態系でみたときに、同じような人だけでは組織は成り立たない」と教わり、偏らず満遍なく色んなタイプの人を採用することを大切にしているんです。それと同じで、「育休」など会社の制度も今よりもっと色んな人が活用できるといいですよね。
実際に男性育休を取得したSDGs推進室所属の山本さん
今年の1月に男の子が生まれて、分割で育休を取りました。生まれて退院した後に2週間、そのあと少し経ってから1ヶ月の取得です。育休前は、そもそも分割して育休が取得できることすら知らなかったです。あと、育休を取得して実感したことは、やっぱり部署やチームのサポートがあってこそ、だということ。どうしても組織が大きくなると、そこまでサポートが行き届かないので、そこが育休取得の大きな課題だと思います。
<スプツニ子!さん>
育休は、男女ともに選択肢があって良いと思うんです。それこそ、育休にも女性の多様性があってもいいですよね。珍しいと思うんですけど、私は産後でもすぐに働きたくて。それこそ、渋谷区では生後3か月で保育園に入る権利があるんですよ。それも区役所にいって、初めて知りました。「女性は育休を長くとって当たり前」みたいな、そういう男女の分け隔たりがなくなることを推進したいです。